若手のテキスタイルデザイナーを育てるマテセン・スクール 第一期生 里見さんの成果

2021年7月からスタートしたマテセン・スクール。
マテセン・スクール とは、尾州産地の繊維関係の企業で働く若手従業員や、産地企業に就職を志す学生など、産地で活躍したい方を対象に、テキスタイルデザイナーの育成を図るための企画です。
マテセン・スクール開始時の記事はこちら

今回はスクールに参加した 第一期生の里見さん(長谷虎紡績株式会社)にお話を伺いました。

 

Qマテセン・スクールに参加した理由は?

私は、高校で「簿記」、短期大学で「ファッション」、大学で「情報工学」を学び、大学院ではヒトの生活に寄り添う「生活工学」を専攻しました。 
学生時代に学んできたことはそれぞれが一見何の関係もない分野に見えますが、私の中では「一つの線」のように繋がっています。
そして今年(2021年)4月、大好きなファッションの世界で、これまで自分が学んできたことが少しでも役に立てればと思い、羽島市(岐阜県)に本社がある長谷虎紡績株式会社に、入社しました。

今は、目の前にある仕事をこなすだけで精一杯の日々ですが、多くの人に支えられて、やりがいのある毎日を過ごしています。
実際に働いてみると、「素材」や「織り」のことも、まだまだ知らないことがたくさんあることに気づかされ、「改めて、ものづくりの過程を一から学びたい!」と思い立ち、マテセン・スクールに参加させていただきました。

Qマテセン・スクールでの活動はいかがですか?

マテセン・スクールでは、テキスタイル・マテリアルセンターの岩田善之さんが講師となり、「素材」「織り」「加工」等について、丁寧に教えてくださっています。
スクール後半では、岩田さんとマンツーマンで、生地の製作に取り組みました。自分が作りたい生地を具現化していく過程で、デザインのコンセプトを考えることにとても苦労しました。
考えた末、尾州は「毛織物の産地」、岩田さんの得意な「ジャカード織り」、「長谷虎紡績の虎」の3つをかけ合わせて、ウールのジャカード織りで、「トラ柄」を表現することに決めました。


トラの迫力を表現するために、柄の大きさ、形、向き、幅にはこだわって、岩田さんと何度も打ち合わせをしました。
トラの背中の模様と、お腹の模様を組み合わせて、トラの柄が単調にならないようにデザインしました。さらに立体的な表現ができるように、トラ柄に影をつけるなど工夫を凝らしました。
トラ柄はインパクトの強い配色なので、淡茶、濃茶の2色で派手すぎない色目を使って、大人っぽいシックな雰囲気を演出することにしました。


「織り」は伊東紡織(羽島市)に依頼し、実際に工場に足を運び製作工程を見学させていただきました。シャトル織機の杼が左右に飛び、空気を含みながら、ゆっくりと生地が織られていきます。
丁寧に生地が織られていくので、トラの模様が繊細に表現されると同時に、生地に膨らみと柔らかさが生まれ、イメージ以上のものができました。
世界屈指の織物の産地である「尾州産地」の技術の高さに驚かされるとともに、ものづくりの楽しさを改めて実感することができました。 
残すは整理加工(起毛)ですが、この後どうなるのか楽しみです!

 

Qマテセン・スクールの経験をどのように活かしたいですか?

マテセン・スクールは、「研修」と言うよりは、「ビジネスの実践に近い学習」で、自分の好きな生地の製作をゼロベースから企画し、「思い」を形にできる場所だと思います。
ビジネスの世界でも、社会のニーズを掴み、情報を集め、コンセプトを考え、コストやリードタイムを割り出して、ゼロから商品を開発していく過程があります。このスクールでの経験や学びが、将来の糧として、ビジネスにも大きく役立つと確信しています。

これからも、さらに経験を積んで、「ものづくりの人の気持ち」も、「営業の人の気持ち」も理解できる「架け橋のような存在」となって、会社や社会に貢献できるよう、チャレンジしていきたいと思います。
そして、アパレルや紡績が行われてきた歴史のある街、私の出身地でもある「ここ岐阜」に貢献できる、そんなキャリアを歩んでいきたいと思っています。