ファッションデザイナー成功事例 「n’ui 岩崎久留美さん」インタビュー

マテリアルセンターとの出会いをきっかけに独創的なファッションを創造するファッションデザイナーの岩崎さん。n’ui のブランド由来や未来ビジョンについてお話を伺いました。

n’ui 岩崎久留美 名古屋市出身

幼少期はどんな子だったのですか?

こどもの頃からものづくりが好きで、学校の授業でいうと、図工とか家庭科とか技術が好きでしたね。 何かを作り上げることにとても関心がありました。

大学は椙山女学園大学生活科学部というアパレル系に進学しました。もともと家庭科の教師になりたいと思っていたんです。 家庭科好きでしたからね。それから、もっと勉強したくて、モード学園の夜間に通いはじめて、ダブルスクールをしていました。 で、大学を卒業してから、モード学園の方を昼に切り替えて、卒業したんです。

なんでそんなに詰め込んで頑張ったんですか?

今考えてみると、生涯仕事を続けて行くという事が当たり前のように自分の中にあり、その為にできる限り自分に合った魅力的と思える仕事に就きたかった。ただ、自分には「人より優れたものがない・・・」という漠然とした劣等感を感じ始めた時期でした。 「将来への欲と焦り」の中で、学生という限りある時期の間に「やりたい」と思った事は全部やりたかったし、自分の可能性を最大限試してみたかったんだと思います。 今となってみたら、自分だけの為に時間やお金を使う事を許される環境にあった事をとても感謝しなければいけないな、と実感しています。

卒業後は?

卒業してから、名古屋のオーダーの洋服会社に一年くらい務めました。そこでパターンを引きながら、縫製などをしていました。 で、次に量産型の工業用パターンを学びたくて東京の会社に転職しました。そこでは、1年半くらい、いろんなメーカーの展示会のサンプル製作を専門に行っていました。

工業用パターンを勉強した後、今度は、パターン、縫製、生産管理などを担っていました。で、その会社のオーナーが 名古屋出身であったことから、会社の拠点が名古屋に移りました。それからいろいろありまして、また、会社の拠点を東京に移す・・・みたいな話があったんですが、 その時は、名古屋に残ることにしました。名古屋では、東京の時勤めていた会社時代の人伝に仕事をもらいながら一人でやっていました。なんか、すごい複雑ですね。。

いつから、自分でデザインするようになったのでしょうか?

アクセサリーをつくっていた友人が京都で展示をするから、一緒に出さない?って誘われたんですね。 で、面白そうだから「いいよ」って。はじめて自分でデザインした作品を世に出すことになったのです。その時、仮で“ウイ”とブランド名をつけました。

n’ui って書くのになんでウイって読むのですか?

実は、特にこだわりはありません(笑)でもなんというか、ブランド名にあまり意味を持たせたくなかった・・・っていうのもあるんですけど。自然体な感じ。 デザイナーとしての認識はないので、縫うということを大切にしたかったので、この名前です。

はじめて自分のデザインを出展した展示会はどうでしたか?

展示会は自分で思っていたよりも好評で、たまたま来られた海外の方ととか、気に入ってくださって、自分がデザインしてつくったものに反応があったことがとてもうれしくて・・・ ここから「デザイン」もしてみたいというこで、本格的にn’ui が始まったんです。

マテリアルセンターとの出会いはどんなきっかけですか?

本格的に始めたいと思っていた当時、「日本のいい素材」を使いたいという気持ちで「着物の文化」を取り入れようと、手当たり次第、着物を集めていました。 全然関係ないんですけど、母が洋裁教室に通っていて、その洋裁教室の見学会みたいなツアーでマテリアルセンターに行ったことがあったようで、、、まず、母がマテリアルセンターのことを知っていたんです。 で、そんな母の勧めで、はじめてマテリアルセンターを訪れました。

「はじめて来て、生地がつくりたいんですけど、作れますか?」って聞くと

「作れますよ」って。「え?」って感じで。。

一番最初につくったのは、「着物の和柄」と、マテリアルセンターの「アーカイブの中で見つけた面白い技法」と組み合わせてオリジナル柄のジャカードを作ったんです。その時の生地の写真がこちらです。実際に織り工場にもお邪魔して工程を見せていただきました。感動~!。 そのオリジナル生地を使って秋冬でコートとパンツを作ったのが2016年です。

それから4年くらいで、ジャカードとニットを含め16種類以上のオリジナル生地を開発してきました。

主にどんな洋服をつくっているのですか?

Tシャツやカットソー、パンツやスカート、ワンピースなどの洋服を作っています。

いつくらいから軌道に乗り始めたのですか?

東京ビッグサイトで行われたギフトショーという合同展示会に出店した際に百貨店のポップアップのチャンスをいただくことができました。今年は名古屋、仙台、神戸、東京の4都市の予定です。

それから日系MJ 新聞や繊研新聞 などに取り上げられて、徐々に軌道にのっていきました。

今後のビジョンなどはありますか?

自分の原点は、ものづくりなので、n’ui では、デザインから縫製まで一貫してつくることを続けていきたいです。 品質を保つために、「作る」ということが、「次のモノづくりにつながる」と考えています。「つくりながら」いつも考えているんです。 そして、自分のもとで、製品を作れる環境をつくり、一貫してものづくりをできる若手の技術者を増やしていきたいです。 新しい仕様のかわいいポケットとか作りたいですね。

デザインに気づいた人が少し楽しくなるようなファッションを作っていきたいっていう気持ちです。 本当に小さな幸せですけど。

モノづくり(洋服)の前には生地作りをしなくてなりませんよね。マテリアルセンターには本当に膨大な資料があって、 「ゼロから作る」のではなく、「組み合わせて考える」ってことができるので、話が早いし、実際にサンプルを手にとって打ち合わせできれば、間違いも少なく、リスク回避にもなりますよね。 あと、マテリアルセンターって繊維にかかわる人たちとたくさん出会えるんです。その人脈が築ける場所でもありますよね。それもとっても大きなメリットとしていつもお世話になっています(笑)


取材にご協力いただいた岩崎久留美が代表を務める「n’ui products」 の 公式ホームページはこちら
https://www.nui-products.com/

日経MJ 掲載記事

織研新聞 掲載記事