マテセン・スクール第二期生 新木萌愛さんインタビュー

Q1.マテセン・スクールに参加した理由は

デザインの世界の中でも、インテリアやファッションなど、私たちの生活の身近な場面で目にする「テキスタイル」の世界が、私には楽しそうに思えて、名古屋芸術大学の「テキスタイルコース」に進学し、織物のことを学んできました。

大学卒業後は、縁あって、カワボウテキスチャード(株)(羽島市)に就職し、新社会人として、資材部(インテリア)の営業として働いています。
資材部では、椅子の座面や背もたれのテキスタイル・デザインの企画に携わっていて、大変な事もありますが、やっぱり、繊維の世界は面白いと感じます。

一緒に仕事をする尾州産地の職人さんは、職人気質で、知識も経験も豊富ですから、糸の性質とか、織りとの相性とか「ものづくりの本質」を、熟知していらっしゃいます。 だから、尾州産地の人たちと仕事をしていると、日々新しい発見や学びがあって、それが、今の自分の成長につながっていると実感しています。そんな勉強の毎日が、率直に楽しいです。

一方で、現場を巡ってみると、産地の技術が消えつつあると感じています。「昔は、もっと複雑なデザインが織れた。」とか耳にしますし、もう再現ができないデザインや、つくれないモノがあるのも、この産地が直面する現実です。
今、私が携わっている「生地の見本づくり」さえも、携わっている人が減っています。

産地の10年先、20年先を見据えたときに、今ここで、一人でも手を挙げて、産地の技術や知識を吸収していかないと、せっかくの匠の技ですから、もったいないと考えています。
残せる技術は、少しでも後世に残せるように、私が産地の人たちから「バトン」を受け継いで、そして、次の世代へと繋いでいかないと、と感じることがよくあります。

大学で学んだことなんて、ほんの一握りですね。
今は、もっと自分を高められるよう、日々勉強の毎日です。
そんなところに、私のスクール参加の動機が、あるような気がします。

Q2.マテセン・スクールの活動はいかがですか。

岩田講師の得意なジャカード織りを中心に、素材・織り・加工のことを幅広く学べて大変、勉強になっています。

それに、スクールには、女性の酒匂さんや森さん、男性の小笠原さんが参加していて、とても和気あいあいとした雰囲気で、講義が楽しいです。
企業の垣根を越えて、この産地のことや、ちょっとした仕事のことも話ができて、スクールが、人と人とをつなぐ、いい交流の場にもなっています。
今後は、スクールの仲間と、スクールの枠を超えて、ビジネスパートナーとして、一緒にこの産地で「ものづくり」に携わっていけると、嬉しいです。

尾州産地は、人と人のつながりで成り立っているため、私にとって、人とのつながりは、大切なキーワードです。

私が在籍する会社には、自社工場がありますが、1つの商品(テキスタイル)をつくるのにも、紡績も、織りも、染色も、整理も、産地の企業にお願いしないと商品は、完成させられません。

尾州産地の企業は、「サプライチェーン」としてつながっていて、産地全体が、テキスタイルを製造するひとつの大きな工場としての役割を担っています。
それぞれの専門のプロの方と力を合わせるから、お客様の期待に応えられる「良い商品」が製作できるのだと考えます。

だから、仕事をするうえで、人と人との「つながり」はとても大切です。信用と言うよりは信頼し合いながら、リスペクトしながら、仕事に携わっていくことが、とても大切だと感じています。

Q3.マテセン・スクールの経験をどのように活かしていきたいですか。

店頭でソファーや、服を購入するとき、商品のデザインの良さであったり、価格に目が留まりがちですが、風合いであったり、素材の良さであったり、商品のディテールを、お客様にもっと伝えられると、いいなと思うことがあります。

テキスタイルは、複雑な工程を経るなかで、時間もお金も、苦労も沢山かけて、出来上がります。いろいろな職人の方の思いも詰まっています。
そんな「ものづくりのバックグランド」を、お客様(消費者の方)に伝えていけると、海外製品が多い日本ですけど、産地を見直して頂ける、一つのきっかけになる気がします。

だから、仕事やスクールでの学びを活かして、「伝える」という役割も将来はしっかりと担っていけると、いいなと思っています。

もう一つは、いつか、私が製作したテキスタイルを、お客様に、世界の人が注目する様な大きな展示会で使って頂けると、嬉しいです。
展示会で多くの人の目に触れて、感動を与えられる「テキスタイル」を、この産地で製作し続けていきたいですね。

そんな夢を密かに抱いています。