SHINYAKOZUKA(デザイナー 小塚信哉さんと取締役 梶浦慎平さんへのインタビュー)

■デザイナーを目指すようになったきっかけを教えてください

 ぼく(小塚)は、もともと内向的な子で、昔から「空想すること」や「つくること」が好きでした。高校の頃は、ストリートファッションが全盛で、ぼくも好きで着ていたのですが、ある時、仲が良かった友人に「おしゃれやな!」と言われ、その些細な一言がきっかけで、ファッションの道に進むことを決めました。

■どのようにデザインの勉強をされましたか?

 高校卒業後、東京の専門学校に通ったものの、「デザイナーにはなれないだろうな」と思っていました。しかし、進路相談の時期になり、当時の専門学校の先生にデザイナーを諦めるのはもったいないと背中を押して頂いたこともあり、ロンドンの芸術大学(セントラル・セント・マーチンズ)に留学し、6年間勉強しました。
 セント・マーチンズでの勉強は、日本で学んだ知識が役に立たなくて、0からのスタートみたいなものでしたが、ここで学んだことが自分のアイデンティティになっていると感じています。
 例えば、シャツを作成する課題が与えられて、授業では要点だけしか教えてくれないので、自分で服屋に足を運び、縫製屋にアプローチし、パターンや縫製の知識を現場で一つひとつ学び、わからないことは先生に自分から質問し、プレゼンで発表しました。自分のペースで進めることができるので自分にはそれがあっていました。

■デザイナーである小塚さんとそのパートナーである梶浦慎平さんとの出会いは?

 入学前に語学学校に通っていたときに出会いました。たまたま同じ学校に日本人2人しかいなくて、たまたま同じ年齢で、たまたま同じクラスだったんです。
 梶浦が「メゾンマルジェラ」のニットを着ていたので、「たぶん、この人服のことが好きだろうな」と思って声をかけました。
 デビューする際、ぼくは、デザインしかやってこなかったので、ファッションのマーケティングとかビジネスはまったく知らない状態でした。梶浦が服のバイヤー(服の買い付け)や、ニューヨークで日本人デザイナーの生産管理をやってたので、彼を頼って写真を送ったり、値段のつけ方を相談するなどして、支援してもらったんです。そんなことがあって、今こうしてぼくがデザインを担当して、それ以外を梶浦がやってくれていて、一緒に仕事をしています。

■テキスタイルマテリアルセンター(以下、マテセン)との出会いは?

 昨年(2018年)、Tokyo新人デザイナーファッションで賞を受賞し、東京の若手デザイナー10人の1人に選ばれましたのがきっかけです。受賞を受けて、生地の産地とデザイナーを繋ぐコーディネーターの宮浦晋哉さんと知り合って、彼にマテセンに連れて来てもらいました。
マテセンの生地は、1日かけても全て見切れないほどの量で大変参考になるけれど、自分たちだけではその生地をどう扱っていいかわからない。そこで、マテセンの岩田善之さんに生地づくりについて相談しました。
 最初につくった生地は、ジャガードの生地で、B品になってしまう様な「やすりめ」の現象をあえて起こして、表面をランダムにみせるような生地をつくりました。
 建築の場合は、1ミリずれることは許されないと思うけれど、ファッションの場合は、1ミリずれることによる良さがあって、そういった偶然性から生まれる「デザインの趣」を狙ってつくって頂きました。
 生地づくりって、言葉だけでイメージを伝えてつくってもらうので、100%イメージ通りにならない場合が多いんですけど、岩田さんの場合はイメージにぴったりの生地にしてくれたから、びっくりしました。

■尾州産地の生地の良さを教えてください。

 一言で言えば、クオリティーベースが高いと感じますね。織りの技術も、整理加工も、尾州産地は技術水準が高いから、肌触りもやっぱりいいし、起毛間の感じとかもよくて、仕上がった生地の質が高い。そんなすごい産地の生地を使って、これからも継続的に服をつくっていけたらいいなと思います。
 ぼくらが、尾州産地を知ってもらえるような切っ掛けの服をつくることで、それで「服をつくる産地」も「服を着る人」もお互いに幸せになれるような、橋渡しができるといいなと思います。

■SHINYAKOZUKAのブランドコンセプトは?

 「全てのことは、明瞭である必要はない」です。明確でわかりやすい具象化されたファッションって多いけれど、ぼくらは抽象的な表現のなかでのファッションの奥深さ、面白さを追及しています。
 黒でもない白でもないはっきりしないところに、「これって、どうなっているだろう?」と思わせるところを魅力にしています。ある種、誰もやってこなかった領域なので挑戦だと思っています。想像力を掻き立てられるような服を作っていきたいです。
 ファッションって360度の意見、見方があってよいと思うんですよね。こっちの角度から見たらかっこよくなくても、こっちから見ると「この服好き」みたいな。
 自分のブランドだけが正義だと思って振舞ってはいけないだろうなと思っていて、ユニクロであっても無印でも、ディオールでも、どのブランドにも合う服っていうのが、究極の普遍化された服だと思うんです。ぼくらは、そんなブランドを目指しています。

■ファッションの役割を教えてください。

服を着るということは、人間しか持ち得ない「楽しみ」だと思います。その楽しみをもっと多くの人に実感してもらえられたらいいですね。 例えば、「次のデートのためのこの服着て行こうかな!」と、人の気持ちをわくわくさせられる様な服を提供できたら、嬉しいです。人の気持ちを、うきうきさせる、わくわくさせる、ファッションの源泉って、きっと、そんなことだと思うんですよ。
 そうやって人を輝かさせる、人としての魅力を少しで上昇させられる、それによってその人の人生を豊かにできる、ぼくらの仕事って、そういう仕事じゃないかなと、思っています。


取材に協力いただいた「SHINYAKOZUKA」の公式HPはこちらからご覧ください。
http://shinyakozuka.com/

コレクションの様子(動画)はこちらからご覧ください。